《前回までのあらすじ》

どんな勝負であろうと。
どんな相手であろうと。
マッチポイントまでもつれ込む名勝負製造職人――マッチポイントJun!
そんな彼女が新たにサドンデスアタッカーJunと名を変え、帰ってきた!
果たして、今回彼女を待ち構える試練とは!?
痛快サドンデスストーリー。衝撃の再起動――!

            〈作・フミクラ〉
【原案 にまにま&レイク】

   
    ○●○●○●○●○
  

《登場人物紹介》

サドンデスアタッカーJun
(さどんですあたっかー・じゅん)
ご存知、マッチポイントJunがパワーアップして帰ってきた! どんな勝負でもサドンデスに持ち込むんだ! 女性。

マッチポンプたかし
(まっちぽんぷ・たかし)
ジュンのライバルで、今まで何度も彼女の前に立ちふさがってきたぞ! だが、今回は頼りになる仲間として再登場だ! 男性。

こより使いの苫子
(こよりつかいの・とまこ)
ジュンの親友だぞ! 誰よりもティッシュ製のこよりを上手く扱えるんだ! 女性。

金メッシュ明美
(きんめっしゅ・あけみ)
黒髪だけど、一部を金色にカラーリングしているぞ! きっとお洒落さんだ! 今回初登場。女性。

ファーザー
(ふぁーざー)
今回の敵だ! 恐ろしい手段でジュンたちを追い込んでいくぞ! 今回初登場。男性。

権藤先輩
(ごんどう・せんぱい)
ジュンと苫子の頼れる先輩だ! 後輩思いで、「フラグ折りの権藤先輩」とも呼ばれているぞ! 男性。

 

《兼役》(話し合って、分け合ってください。1人だけにやらせないでね)

CMナレーターA
CMのナレーションだ! 笑顔で決めよう!

CMナレーターB
CMのナレーションだ! どっしり決めよう!

CMナレーターC
CMのナレーションだ! 楽しく決めよう!

CMナレーターD
CMのナレーションだ! ビシッと決めよう!

CMナレーターE
CMのナレーションだ! 爽やかに決めよう!

CMナレーターF
CMのナレーションだ! 穏やかに決めよう!

  
    ●○●○●○●○●
  
  
  
    ● ● ●
  

《 本文 》

  

こより使いの苫子
「――きて」

サドンデスアタッカーJun
「……ぅん?」

こより使いの苫子
「起きて、ジュンちゃん」

サドンデスアタッカーJun
「んあ……苫子(とまこ)? 何そのゴツい赤の首輪。イメチェンした?」

こより使いの苫子
「ジュンちゃんにもついてるでしょ。とにかく、起きて」

サドンデスアタッカーJun
「は? そんなのあたしには――本当だ! 首輪ついてる! 黒の! 何これ、ファッションサンタからのプレゼント!? 嬉しいけど、苫子のやつのほうが、赤いやつのほうが可愛い!」

マッチポンプたかし
「ようやく起きたかと思ったら……相変わらず、やかましい女だ」

サドンデスアタッカーJun
「っ! 君は――マッチポンプたかし!? なんで君も黒い首輪つけてんの、っていうか、なんでここに、っていうか、そもそもここどこ!?」

金メッシュ明美
「使われなくなったホテルの宴会場……ってとこだろうな」

サドンデスアタッカーJun
「……誰?」

金メッシュ明美
「明美。金メッシュ明美。アンタは?」

サドンデスアタッカーJun
「――Jun。サドンデスアタッカーJun。ちなみにジュンは、ローマ字でJunと書いて、Jun」

こより使いの苫子
「こういう時、呼び名で自己紹介する?」

マッチポンプたかし
「待てMJ。お前はマッチポイントJunだったろ。いつの間にサドンデスアタッカーに進化したんだよ」

サドンデスアタッカーJun
「君のせいだよ」

マッチポンプたかし
「あ?」

サドンデスアタッカーJun
「君の呼び名のせいで、コンビやカップルと勘違いされることが多くて……ちょっと気色悪かったからサドンデスアタッカーに変えたんだ」

マッチポンプたかし
「……なんか、すまん」

サドンデスアタッカーJun
「別にいいけどね。これに関しては君が悪いわけじゃないし」

こより使いの苫子
「さすがジュンちゃん! 器が大きいね!」

 

 

ファーザー
『ようやく全員目覚めたようですね』

サドンデスアタッカーJun
「……マッタカ、今何か言った?」

マッチポンプたかし
「いいや、俺は何も?」

サドンデスアタッカーJun
「でも、今男の人の声が……」

こより使いの苫子
「私も聞こえた!」

金メッシュ明美
「ワイもだ」

サドンデスアタッカーJun
「もしかして……おばけ?」

こより使いの苫子
「おばけ!?」

マッチポンプたかし
「バカなことホザいてんじゃねえよ! この科学が発展した時代におばけなん――」

ファーザー
『おばけではありません。この声は、その部屋に備え付けられたスピーカーから――』

サドンデスアタッカーJun
「ぎゃああああああああああ!」

マッチポンプたかし
「わあああああああああああ!」

こより使いの苫子
「え、ちょ、よく聞き取れなかったけど、何て言ってた!?」

サドンデスアタッカーJun
「判んない判んない! パニック!」

マッチポンプたかし
「ミートゥー!」

金メッシュ明美
「おばけじゃない、とさ」

こより使いの苫子
「おばけじゃない? ってことは、リアルガチのおばけってこと?」

金メッシュ明美
「は?」

こより使いの苫子
「いや、だって、それ、押すな押すな絶対に押すなのパターンだよね? 逆のパターンだよね?」

マッチポンプたかし
「ば、馬鹿馬鹿しい! こんなところにいられるか、俺は自分の部屋に帰らせてもらう!」

サドンデスアタッカーJun
「ズッリィ! あたしも! あたしも帰る!」

こより使いの苫子
「駄目だよふたりとも! それ死亡フラグ! 権藤先輩の言葉を思い出して!」

権藤先輩
『死亡フラグは並のヤツじゃ折れねぇからよ。くれぐれも、俺のいないとこでは立てるんじゃねぇぞ』

金メッシュ明美
「いや、そもそもこの部屋から出られないだろ」

こより使いの苫子
「そうだった!」

サドンデスアタッカーJun
「出られないの!? なんで!?」

ファーザー
『壇上にあるモニターをご覧下さい』

金メッシュ明美
「壇上?」

こより使いの苫子
「モニター?」

 

 

サドンデスアタッカーJun
「舞台に置いてある大きいテレビが急についた!?」

こより使いの苫子
「誰かリモコン持ってる?」

マッチポンプたかし
「持ってるわけねぇだろ」

こより使いの苫子
「じゃあこれ……おばけ!? ポルターガイスト現象!?」

サドンデスアタッカーJun
「ばばばバーリア! これであたしは、おばけの攻撃が効きませーん!」

こより使いの苫子
「え、スーパーバリア!」

マッチポンプたかし
「ハイパーバリア!」

サドンデスアタッカーJun
「ふたりともズッリィ! バリア一旦解除してハリウッドバリア!」

マッチポンプたかし
「バーカ! ハリウッドバリアは、日本では効果を発揮しねえよ、おばけさん、こいつやっちゃってくださーい」

サドンデスアタッカーJun
「ジュンミサイル発射ー。ドドドドドヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン。ハイパーバリア貫通崩壊バキーン!」

マッチポンプたかし
「何してんだこのイカレポンチ!」

 

 

ファーザー
『皆様はじめまして、ファーザーと申します』

マッチポンプたかし
「あ?」

こより使いの苫子
「あれ?」

サドンデスアタッカーJun
「んん?」

ファーザー
『どうなさいましたか?』

サドンデスアタッカーJun
「え、人間じゃん。仮面かぶった」

ファーザー
『? そうですが』

マッチポンプたかし
「は? おばけっつったよな?」

ファーザー
『……言ってませんが。むしろ否定していましたが』

こより使いの苫子
「だからそれ、逆のパターンですよね?」

ファーザー
『そんなパターンは知りませんが』

マッチポンプたかし
「んだよ、コイツ。ペテンかよ」

ファーザー
『冤罪にもほどがありませんか?』

金メッシュ明美
「で、結局お前は誰で、ここはどこで、この首輪は何で、目的は何なんだよ」

ファーザー
『ありがとうございます、部分金髪のあなた』
『改めまして、私の名はファーザー。皆様を眠らせた上で拉致し、猛毒が仕込まれた首輪をつけ、この場所――とある廃ホテルに閉じ込めた者であり、今から始めるデスゲームの主催者です』

マッチポンプたかし
「眠らせただと……どうやって」

ファーザー
『くじら公園――キッチンカー――おしるこ』

サドンデスアタッカーJun
「もしかして……!」

ファーザー
『ええ。皆様が食べたあのおしるこに、睡眠薬を仕込んでいたのです』

こより使いの苫子
「え、じゃあ、あの人の良さそうなおばあちゃんが」

ファーザー
『ええ。変身した私です』

マッチポンプたかし
「なんだよ変身って。人造人間(ホムンクルス)かよ。変装だろ」

ファーザー
『……変装した私です!』

こより使いの苫子
「まんまと一杯食わされたってこと? ――おしるこだけに」

金メッシュ明美
「……え? なんて?」

こより使いの苫子
「何がですか?」

金メッシュ明美
「おしるこだけに、って」

こより使いの苫子
「いや、だから、おしるこを一杯食べたことによって相手の罠にはまったわけですよね」

金メッシュ明美
「うん」

こより使いの苫子
「だから、おしるこだけに、一杯食わされた、って」

金メッシュ明美
「……ごめん、判んね。どういうこと?」

こより使いの苫子
「あれ、判りにくかったですか?」

金メッシュ明美
「うん」

こより使いの苫子
「一杯食わされたの意味は?」

金メッシュ明美
「一度ごちそうしてもらったってことだろ?」

こより使いの苫子
「それもあるんですけど、上手くだまされたって意味もあるんです」

金メッシュ明美
「そうなんか? ……あ、あー、なるほど! そういう意味か!」

こより使いの苫子
「判ってくれましたか?」

金メッシュ明美
「すごく判った! アンタ賢いな。ワイは明美。金メッシュ明美。アンタの名前は?」

こより使いの苫子
「苫子。こより使いの苫子と申します」

金メッシュ明美
「こより? なんだこよりって? まーいいや。よろしくな苫子」

こより使いの苫子
「あ、はい、よろしくお願いします」

金メッシュ明美
「いいよ、タメ口で。ワイらもう友達だろ」

こより使いの苫子
「距離感……」

金メッシュ明美
「ん?」

こより使いの苫子
「いや、なんでも……よろしく、明美ちゃん」

サドンデスアタッカーJun
「よかったね苫子。友達できて」

マッチポンプたかし
「こより使い、俺は2杯食ったんだけど、この場合も一杯食わされたってことでいいのか?」

サドンデスアタッカーJun
「あ。あたしも3杯食べてたわ。どうなの、苫子」

マッチポンプたかし
「と、言いつつ実は俺、4杯食ってたんだけどね」

サドンデスアタッカーJun
「あ、うっかりあれ入れるの忘れてたわー。5杯いってたわー」

マッチポンプたかし
「待てよ……あれと、それとあれでー……あー、8杯か。悪い8杯食ってたわ。これでも一杯食わされたってことでいいのかな? なぁ、MJ」

サドンデスアタッカーJun
「ちょっと待って。ちょっともう1回数えるね。……あ、細かいあれは細かいから入れてなかったけど、あれ入れたら15杯だ。どうなの苫子。これでも一杯食わされたに入るの? あと、今はもうMJじゃなくてSJだから」

こより使いの苫子
「何杯でも一杯食わされたってことで、いいんじゃない。ほら、権藤先輩も前に言ってたでしょう」

権藤先輩
『この大丼(おおどんぶり)に入れちまえば、一杯も百杯も同じく一杯だ! そうだろ』

ファーザー
『私はファーザー! デスゲームの主催者です!』

マッチポンプたかし
「何だ急に大声出して」

ファーザー
『ごしゅ――!』

サドンデスアタッカーJun
「ごしゅ?」

ファーザー
『……あなたたちが私を無視して駄弁(だべ)っているから、気付いてもらうために大声を出しているんです。こんな状況なんですから、デスゲームとは何なのか聞きなさいよ! 首輪を外すにはどうすればいいのか、とか色々聞きなさいよ!』

サドンデスアタッカーJun
「うわっ、自分が主役じゃなきゃ嫌なタイプだ」

金メッシュ明美
「あー、中学の時いたわーこういう奴、苦手だわー」

サドンデスアタッカーJun
「あ、気が合うね。ユンスタやってる?」

金メッシュ明美
「悪ぃ。SNSの類はやってねーわ」

ファーザー
『……』

マッチポンプたかし
「そういやお前、全然ユンスタ更新してねぇだろ」

こより使いの苫子
「そうなの! ジュンちゃん、ユンスタの話題を自分から出して、写真や動画撮るくせに、それ全然上げないの。こっちは上がるの楽しみに待ってるのに」

金メッシュ明美
「アンタそれは駄目だろ。人として」

ファーザー
『おーい』

サドンデスアタッカーJun
「妹にも口酸っぱく言われてるからさ、上げるつもりはあるんだよ。でも、ハッシュタグを考えるのが難しくって」

マッチポンプたかし
「ハッシュタグって別にあれ大喜利じゃねぇからな。ていうか最悪、つけなくてもいいからな」

サドンデスアタッカーJun
「え? ガチ? 面白いこと書かなくていいの? でも、権藤先輩は――」

権藤先輩
『ユンスタのハッシュタグとは、自らの独自性を演出するための重要なピースだ。だから俺は、この何気ない写真にあえてこの世紀末ハッシュタグを使う。見せてやるよ。バズの向こう側をな!』

サドンデスアタッカーJun
「って」

こより使いの苫子
「先輩のは独自路線だから」

ファーザー
『おーい』

サドンデスアタッカーJun
「そっか、そういうことなら今上げちゃう! みんな、並んで! 記念写真撮ろう!」

マッチポンプたかし
「俺は映りたくないから、代わりに撮ってやる。スマホ貸せ」

サドンデスアタッカーJun
「サンキュー。明美さんは映っても大丈夫な人?」

金メッシュ明美
「ん? ワイのこと反社か何かだと思ってんのか?」

こより使いの苫子
「職業とか関係なく、あの人みたいに写真が苦手な人もいるから」

金メッシュ明美
「なるほどな親友。ワイは全然オーケーだ。さぁ撮れ」

こより使いの苫子
「親友?」

サドンデスアタッカーJun
「折角だし、お揃いのポーズしよっか? 苫子何か案ある?」

こより使いの苫子
「そうだね。首輪つけてるし、それを利用してハートを作って――こういうのはどう?」

金メッシュ明美
「天才かよ大親友!」

こより使いの苫子
「光の速さでランクアップしてる!」

サドンデスアタッカーJun
「じゃあ、そのポーズでいこう」

ファーザー
『おーい!』

サドンデスアタッカーJun
「マッタカ、撮って」

マッチポンプたかし
「はいはい。――よし。撮るぞ。はい、チーズ」

ジュン & 苫子 & 明美
「「「いぇーい」」」

マッチポンプたかし
「――はい。はいOK」

サドンデスアタッカーJun
「上手く撮れた?」

マッチポンプたかし
「当然だ。確認してみろ」

サドンデスアタッカーJun
「どれどれ――あ、いいね。上手いね」

マッチポンプたかし
「おべんちゃらはいいから、今度はちゃんとアップしろよ」

サドンデスアタッカーJun
「判ってるって。顔にゴールデンドーナツの粉みたいなのをふりかけた加工したらすぐアップするよ」

こより使いの苫子
「いいよねー、あれ」

マッチポンプたかし
「いいか? あれ」

金メッシュ明美
「何だ、それ」

ファーザー
『うおおおおおい!!』

マッチポンプたかし
「るっせ、何だよ」

ファーザー
『何ですかその態度!』

サドンデスアタッカーJun
「やばっ、怒ってる。えーと……良ければ一緒に撮りますか?」

ファーザー
『別に写真を撮られなかったことを怒っているわけじゃありません!』

サドンデスアタッカーJun
「じゃあ何に?」

ファーザー
『何に!? 私の話を聞かないことに対してに、決まっているでしょうが!』

マッチポンプたかし
「何か話したいことがあんのか?」

ファーザー
『ありますよ! ていうか、話している最中にあなたたちが駄弁りだしたんでしょうが!』

こより使いの苫子
「お、落ち着いてください。前に権藤先輩がこんなことを言ってました」

権藤先輩
『お前が猫舌なのは、熱いものをおそるおそる食べてるからだ。猫舌をやめたかったらな、恐れを捨て、ひと思いに口に放り込むんだよ!』

ファーザー
『だから!? あと、さっきから言ってる権藤先輩って誰!?』

こより使いの苫子
「話すと長くなります」

ファーザー
『(ため息)じゃあいいです』

こより使いの苫子
「あれは、とても暑い夏の日のことでした」

ファーザー
『いいっつってるでしょうが!』

サドンデスアタッカーJun
「確認なんだけどさ、マッタカ」

マッチポンプたかし
「なんだ?」

サドンデスアタッカーJun
「このゲームの黒幕って君じゃないよね?」

マッチポンプたかし
「……はぁ?」

金メッシュ明美
「どうしてそう思ったんだ?」

こより使いの苫子
「明美ちゃんは知らないだろうけど、この人、今まで色んな事件の黒幕になっては、時には敵として、時には味方のふりをした敵として、ジュンちゃんの前に立ちふさがってきたんだよ。それでついた呼び名が――マッチポンプのたかし」

金メッシュ明美
「……ヤベー奴だな」

マッチポンプたかし
「ふふっ、それほどでもねぇよ」

金メッシュ明美
「褒めてねーよ」

サドンデスアタッカーJun
「だから、今回の黒幕も……君なんじゃないのかい?」

マッチポンプたかし
「……確かに、お前たちがそういう疑いを持つのも理解できる」

こより使いの苫子
「てことは」

マッチポンプたかし
「焦んな。いくら俺でもこんな大掛かりなことはできねぇし……何より、デスゲームなんて悪趣味な遊びの黒幕には、死んでもならねぇよ。神に誓ってもいい」

金メッシュ明美
「……」

サドンデスアタッカーJun
「……それもそうか。疑ってごめんなさい」

こより使いの苫子
「さすがジュンちゃん! 自分が悪いと気付いたら、すぐに頭を下げられる! 人間ができてるねっ!」

サドンデスアタッカーJun
「それはそうとお兄さんにしつもーん」

ファーザー
『……なんですか?』

サドンデスアタッカーJun
「さっき、お兄さんは自分のことをファーザーって言ってましたよね」

ファーザー
『はい。私の名はファーザー。このデスゲームの主催者です』

サドンデスアタッカーJun
「ってことは、この4人のうちの誰かのパパってことですか?」

ファーザー
『……は?』

サドンデスアタッカーJun
「いや、だから、あたしたちの中の誰かの父親ってこと? ファーザーってそういう意味ですよね?」

マッチポンプたかし
「あ、こいつアホだ」

サドンデスアタッカーJun
「黙れマッタカ」

ファーザー
『いえ、名前がファーザーなだけで、別に皆様のうちの誰かの父親というわけでは――』

サドンデスアタッカーJun
「ないの?」

ファーザー
『はい』

マッチポンプたかし
「そりゃあそうだろ」

サドンデスアタッカーJun
「黙れマッタカ。じゃあ、私たち4人のうちのパパではないけど、誰かのパパではあるってことですか? 息子さんや娘さんがいるってこと?」

マッチポンプたかし
「また馬鹿なことを……当然いるに決まってんだろ」

ファーザー
『……いえ、違いますよ? 息子も娘もいませんよ』

サドンデスアタッカーJun
「え?」

こより使いの苫子
「え?」

マッチポンプたかし
「は?」

金メッシュ明美
「あ?」

ファーザー
『え?』

サドンデスアタッカーJun
「それなのにファーザー?」

ファーザー
『ですから、これはコードネームというか、ただの記号みたいなものであって――』

こより使いの苫子
「なりすましってことですか? 誰かの父親になりすましてのロールプレイをしてる、みたいなこと?」

ファーザー
『いや、なりすましっていうか……』

サドンデスアタッカーJun
「なりすましパパってこと?」

ファーザー
『なりすましパパ!?』

マッチポンプたかし
「なりすましパパヨースケ――って、ことか」

ファーザー 改め なりすましパパヨースケ
『どこから生えてきたんですかヨースケ!?』

サドンデスアタッカーJun
「あと、デスゲームって言ってましたけど」

なりすましパパヨースケ
『あ、はい』

サドンデスアタッカーJun
「それって、サドンデスがある形式のゲームですか?」

なりすましパパヨースケ
『サドンデス?』

サドンデスアタッカーJun
「あ、自己紹介が遅れました。あたし、サドンデスアタッカーJunと言いまして、サドンデスがあるゲームしかしないことにしてるんですよ。一ヶ月前から」

なりすましパパヨースケ
『サドンデスとかは特に……』

サドンデスアタッカーJun
「ないんですか?」

なりすましパパヨースケ
『まぁ、ない……ですけど』

サドンデスアタッカーJun
「じゃあ、参加できないかな」

なりすましパパヨースケ
『いや、参加できないとかじゃなく、強制参加……』

サドンデスアタッカーJun
「といわれても、こちらとしては先にサドンデスの方と契約してるんで」

なりすましパパヨースケ
『サドンデスと契約ってなに!?』

サドンデスアタッカーJun
「全体。サドンデス業界全体と契約してるんで」

なりすましパパヨースケ
『……もし参加を放棄するのでしたら、その首輪に内臓された毒が注入されて死ぬことになりますよ? それでもいいのですか?』

サドンデスアタッカーJun
「質問を返しますが、ヨースケさんは、生きるためには契約を破らなきゃいけないって時、実際契約を破れますか?」

なりすましパパヨースケ
『破れますし破りますよ! 普通破るでしょう!』

こより使いの苫子
「ジュンちゃん落ち着いて! こんな時こそ、権藤先輩のあの言葉を思い出して!」

権藤先輩
『昨日何してた? 俺はな、七味唐辛子の仕分けをしてたぜ。このピンセットでな!』

なりきりパパヨースケ
『二度と権藤ナントカの話はしないでください!』

金メッシュ明美
「デスゲームって、そもそもサドンデスみてーなもんじゃねーの?」

マッチポンプたかし
「捉えようによっちゃあそうかもな」

サドンデスアタッカーJun
「そうなの? なら是非やりましょう!」

なりすましパパヨースケ
『はぁ?』

こより使いの苫子
「さすがジュンちゃん! 納得した時の、飲み込みが早い!」

なりすましパパヨースケ
『えぇ……』

サドンデスアタッカーJun
「あれ?」

マッチポンプたかし
「どうした?」

サドンデスアタッカーJun
「ユンスタ見ようと思ったんだけど、ネット繋がらなくて」

マッチポンプたかし
「あ? あ、本当だ。俺のもだ」

こより使いの苫子
「私のも」

金メッシュ明美
「勿論ワイも」

なりすましパパヨースケ
『……今頃気付きましたか。ここは一切電波が入りませんし、電話も繋がりません。外部からの助けは期待しないことです』

マッチポンプたかし
「外部からの助けってなんだよ。デスゲームみたいなこと言いやがって」

なりすましパパヨースケ
『いや、ですからデスゲームなんですってば!』

サドンデスアタッカーJun
「な……なんだって!?」

なりすましパパヨースケ
『え?』

マッチポンプたかし
「デスゲーム……だと!?」

なりすましパパヨースケ
『いや、さっきからそう言ってますよね? 皆さんもデスゲームって口にしてましたよね?』

金メッシュ明美
「悪趣味な野郎め……!」

なりすましパパヨースケ
『……劇団の人たち?』

こより使いの苫子
「私、怖い……」

なりすましパパヨースケ
『むしろ私の方が怖いんですけど……』

サドンデスアタッカーJun
「どうすればいいの!? どうすればあたしたちはここを無事に出ることができるの!?」

マッチポンプたかし
「答えろ、ヨースケ!」

なりすましパパヨースケ
『だから誰が……まあ、いいでしょう。皆様にはこれより2対2のデスゲームを行っていただきます』

金メッシュ明美
「2対2?」

なりすましパパヨースケ
『ご自身に巻かれた首輪の色をご覧下さい。その色と同じ色の首輪をした者が、あなたのパートナーです』

サドンデスアタッカーJun
「てことは、赤の首輪をつけた苫子と明美さんがタッグを組んで、あたしと――」

マッチポンプたかし
「……俺だな」

サドンデスアタッカーJun
「……」

マッチポンプたかし
「やめろその顔。こっちだって不本意だ。……こっちだって不本意だ!」

なりすましパパヨースケ
『……ごめんなさい』

こより使いの苫子
「謝った!?」

 

サドンデスアタッカーJun
「サドンデスアタッカーJun!」

 

CMナレーターA
「あはははははははははは(CM1が終わるまで笑い続ける)」

CMナレーターB
「笑い袋一筋300年。日本全国を笑顔にしてきたその伝統」
「今日も、明日も、規則正しい笑い声をお届けいたします」
「レイク本舗」

 


CMナレーターC
「奇妙で楽しい、豚さんマークのカプセルトイ!」
「にやにや? いや、にまにま。驚きと笑いが、止まらない!」

CMナレーターD
「にまにま製作所」

CMナレーターC
「あなたも一緒に、にまにましませんか?」

 

CMナレーターE
「雨の日も、風の日も。フードがあなたを守る」
「フード付きの服だけを取り揃えたこの場所で、自分だけのスタイルを見つけよう!」

CMナレーターF
「ファッションプラザフミクラ」

 

権藤先輩
「サドンデスアタッカーJun!」

 

なりきりパパヨースケ
『気を取り直して』
『――皆様に命を賭けていただくゲームの名は――デッドラインチェイス!』

サドンデスアタッカーJun
「デッドライン――」

マッチポンプたかし
「チェイス」

なりすましパパヨースケ
『デッドラインチェイスは、この巨大な廃ホテルを舞台に行われる2対2の対戦型ゲームです。ゲームは黒の首輪をつけた攻撃チームと赤の首輪をつけた守備チームに分かれ、守備チームは攻撃チームより1分早く行動を開始します』

金メッシュ明美
「行動って?」

なりすましパパヨースケ
『その説明を行う前に、モニターの真下をご覧下さい』

マッチポンプたかし
「真下? あれは……封筒、か?」

こより使いの苫子
「黒と……赤の封筒があるね」

なりすましパパヨースケ
『黒の封筒を攻撃チーム。赤の封筒を守備チームの代表者がお受け取りください』

金メッシュ明美
「なんだこれ、カード?」

サドンデスアタッカーJun
「こっちは、ホテルの地図が入ってる」

なりきりパパヨースケ
『攻撃チームの封筒にはこのホテルの館内図が、守備チームの封筒には1枚のカードが入っています。このカードをこのホテルの大宴会場『孔雀の間』に設置されたカードリーダーに通すことができれば、守備チームの勝利』
『ゲームの制限時間は30分。守備チームが時間内にカードリーダーにカードを通せなかった場合、タイムリミット時にカードを所持している陣営が勝利となります』

マッチポンプたかし
「所持しているって……攻撃チームは守備チームから奪えってことか?」

なりすましパパヨースケ
『はい』

マッチポンプたかし
「奪うためには何をしても――」

なりすましパパヨースケ
『はい。どんなことをしてでも、タイムリミット時にカードを所持してさえいれば、そのチームが勝利となります。しかし、時間切れの時点でどのチームもカードを所持していない場合、両チームともに敗北となります』

サドンデスアタッカーJun
「敗北……」

なりすましパパヨースケ
『決着がついた瞬間、勝利したチームの首輪は自動的に外れる仕組みとなっております。勿論、勝利チームは外の世界へ解放。敗北したチームは、その首輪に内蔵された猛毒を注入され……死んでいただきます』

こより使いの苫子
「死……」

なりすましパパヨースケ
『アドバイスとしましては、間違ってもこのゲーム以外でここから脱出しよう、などとは考えないことです。窓やドアなど外への出入り口は全て固く封鎖していますし……このホテルにはあらゆる場所に私の目――監視カメラを仕掛けさせていただいております。少しでも怪しい動きを発見した場合、容赦なく首輪の毒を注入させていただきますので、そのおつもりで』

マッチポンプたかし
「……さすがに対処済みか」

なりすましパパヨースケ
『私のスタートの合図で、その部屋のロックは外れます。皆様、命を賭けたゲームをご堪能ください。では、ゲーム――』

金メッシュ明美
「ちょっと待った」

なりすましパパヨースケ
『……おや、命乞いですか?』

金メッシュ明美
「違う」

なりすましパパヨースケ
『では――』

金メッシュ明美
「ルールが難しすぎてゲロ吐きそうだったから、もっと簡単なやつにしてくれ」

なりすましパパヨースケ
『……できません』

金メッシュ明美
「じゃんけんとか」

なりすましパパヨースケ
『無理です』

金メッシュ明美
「はないちもんめとか」

なりすましパパヨースケ
『4人で?』

金メッシュ明美
「あ、入れてほしかったら、5人でもいいけど」

なりすましパパヨースケ
『結構です』

金メッシュ明美
「じゃあ、もう1回子供でも判るように説明してくれ」

なりすましパパヨースケ
『……』

金メッシュ明美
「室内をゲロ臭くしてもいいのか?」

なりすましパパヨースケ
『それは……』

マッチポンプたかし
「ルールを把握できていない奴をゲームに参加させるのは、そちらとしても不本意なんじゃねぇのか?」

なりすましパパヨースケ
『……いいですか。まず、守備チームである明美様は――』

 

こより使いの苫子
「どうしよう、ジュンちゃん。このままじゃ私たち……」

サドンデスアタッカーJun
「まぁ……仕方ないよね。苫子」

こより使いの苫子
「ジュンちゃん?」

サドンデスアタッカーJun
「こうなったら、正々堂々と戦おうね!」

こより使いの苫子
「やる気満々なんだ!? え、私たち友達だよね!? どっちかが負けたら、負けたほうが死んじゃうんだよ!?」

サドンデスアタッカーJun
「うん。だからこそ、悔いのない戦いをしよう!」

こより使いの苫子
「おっと、忘れてた! この子たわけだった!」

サドンデスアタッカーJun
「と、その前に……」
「これ、2千円札。3年くらい前に妹に借りたんだけど、返すの忘れててさ……いまさらあたしが返すのは何か恥ずかしいから、代わりに妹に――キヤに返しておいてよ」

こより使いの苫子
「いや、代わりも何も――まさか、ジュンちゃん……!」

サドンデスアタッカーJun
「頼んだよ、苫子」

 

金メッシュ明美
「あー、なるほど。このカードをワイかマイシスターが最後まで持ってるか、そのどこにあるか判らない『孔雀の間』に置いてあるカードリーダーに挿すことができればワイらの勝ちってことね」

なりすましパパヨースケ
『……ようやく理解していただけましたか』

金メッシュ明美
「おう。忘れないうちにちゃっちゃとはじめようぜ」

なりきりパパヨースケ
『(咳払い)では、皆様今度こそはじめましょう! 命を、生を実感できる、最高のゲーム――デッドラインチェイスを!』
『――ゲーム、スタート!』

 

 

金メッシュ明美
「いくぞ、ベストパートナー! とっととカードぶちこんで、こんなとこからは、すぐに脱出だ!」

こより使いの苫子
「でも……」

金メッシュ明美
「でもじゃねーよ。守備チームのアドバンテージを無駄にする気か? それに――アンタのダチにも頼まれたんだろ。アンタは、生きて帰る責任がある」

こより使いの苫子
「っ! 私だけ帰っても意味ないんだよ! ジュンちゃんがいなきゃ――」

金メッシュ明美
「くそっ、めんどくせーな!」

 

 

こより使いの苫子
「っ!」

サドンデスアタッカーJun
「明美さん」

金メッシュ明美
「なんだ」

サドンデスアタッカーJun
「苫子を、頼んだよ」

こより使いの苫子
「ジュンちゃん……!」

金メッシュ明美
「任せろ!」

 

 

こより使いの苫子
「ちょっ、おろして! おろしてよ明美ちゃん!」

金メッシュ明美
「やだね」

こより使いの苫子
「そんな……このままじゃジュンちゃんが……誰か、誰かお願い! 回収する前に、こんなフラグ、へし折って!」

 

 

権藤先輩
「ルールは俺の中にある。そして、フラグはへし折るためにある」

なりすましパパヨースケ
『っ! 壁が……崩壊した!?』

金メッシュ明美
「……違う。破壊されたんだ。外から。誰だあいつ」

こより使いの苫子
「来て……くれた。最強のフラグブレイカー!」

権藤先輩
「待たせたな、後輩諸君」

マッチポンプたかし
「まさか……!」

サドンデスアタッカーJun
「来ると、信じていたよ」

こより使いの苫子
「権藤先輩!」

権藤先輩
「ふたりとも無事だな。よかった」
「と、それはそれとして、俺の可愛い後輩たちの顔を曇らせたのはどこのどいつだ?」

なりすましパパヨースケ
『っ……!』

権藤先輩
「俺の勘が告げる。――たかし、今回もお前だな」

マッチポンプたかし
「どう見ても違うだろ」

権藤先輩
「え、そうなの?」

サドンデスアタッカーJun
「うん。今回はマッタカ悪くないみたい」

権藤先輩
「なるほど。じゃあ苫子を誘拐しようとしている……まだら髪のお前だな」

金メッシュ明美
「ちげーし。……いや、そうだな。そーだ。その通りだ。ワイが悪い奴だ」

こより使いの苫子
「……はい?」

権藤先輩
「やはりそうか。苫子をそこに置いて、失せろ。今なら見逃してやる」

金メッシュ明美
「はっ! 悪い奴がそんな命令聞くとでも? 来いよ、権藤先輩とやら。ケンカしようぜ」

権藤先輩
「後悔するなよ。俺は男女差別はしない主義だ」

 

 

金メッシュ明美
「いいねぇー。そーいうでかい口を叩く男を踏み潰すのが、最高に興奮するんだ!」

こより使いの苫子
「ちょっ、なんで嘘つくの!? 違うよ! 先輩、この人私の友達! 被害者側!」

金メッシュ明美
「……ちぇー」

権藤先輩
「え、そうなの? じゃあ、誰が悪者?」

サドンデスアタッカーJun
「ん」

なりすましパパヨースケ
『……私です』

権藤先輩
「滅茶苦茶悪そうな奴いた!」

金メッシュ明美
「……」

権藤先輩
「いや、判ってたけどな。ちょっと、こう、エンターテイメントやっていたというか、視聴者にドキドキさせるというかさ。そういうのってあるだろ。それをやっていた。と、それはそれとして悪者のお前!」

なりすましパパヨースケ
『……なんでしょうか』

権藤先輩
「ここに突入する前に警察に連絡をした。あと五分もしないうちに到着するだろうぜ。お前、どうせこの近くにいるんだろ。例えば、このホテルの地下……とかな」

なりすましパパヨースケ
『っ!』

権藤先輩
「とっとと逃げなきゃ、捕まっちまうぞ」

なりすましパパヨースケ
『……こうなったら、首輪の毒を――!』

権藤先輩
「苫子」

こより使いの苫子
「っ! はい!」

権藤先輩
「やれ」

こより使いの苫子
「かしこまりました!」

 

 

こより使いの苫子
「駒戸間(こまとま)流こより法術(ほうじゅつ)――暁(あかつき)の一鍵(いっけん)!」

 

 

金メッシュ明美
「首輪が、外れて落ちた!?」

なりすましパパヨースケ
『なっ……! 一体何をしたんですか!?』

サドンデスアタッカーJun
「簡単なことだよ。苫子は、日本のこより法術御三家のひとつ――駒戸間。その家元の娘なんだ」

権藤先輩
「幼少の頃より親御さんから厳しく鍛えられた苫子にとっちゃ、この程度の首輪の解錠など、赤子の手を捻るようなもん。いや、ティッシュを捻るようなもんってわけだ」

金メッシュ明美
「こより法術?」

こより使いの苫子
「ティッシュでね、こうネジネジ捻(ねじ)ってドリルみたいな形にしたもののことを、こよりって言うんだけど、私は――私の一族は、それを自由自在に操れるの」

金メッシュ明美
「……ごめん。ちと判らん」

マッチポンプたかし
「実は俺も未だによく判ってない」

こより使いの苫子
「明美ちゃんには後で教えるね」

マッチポンプたかし
「……まぁいいけど」

なりすましパパヨースケ
『そんなことができるのならば、何故最初から――』

こより使いの苫子
「寝起きだったから」

なりすましパパヨースケ
『……は?』

こより使いの苫子
「起きたばかりの時ってこよりを上手く操れないでしょ? だから」

なりすましパパヨースケ
『いや、知りませんし! だ、だとしても! もっと早い段階でできたのではないのですか!?』

こより使いの苫子
「ううん。だってほら、ここ、閉め切ってたでしょ。そのせいで空気が薄くて、ずーっと頭がほわほわしてて――権藤先輩が壁を壊して外の空気を入れてくれたお陰でどうにかなりました。助けにきてくれて、ありがとうございます」

権藤先輩
「可愛い後輩のためだからな。――さぁ、話はここまでだ。どうする悪者仮面。そろそろ尻尾巻いて逃げなきゃ、今度はてめぇが閉じ込められることになるぜ? 刑務所っつう、不自由で冷たい建物の中にな」

なりすましパパヨースケ
『(舌打ち)今日のところは、ここまでにしておいてあげますよ!』

 

 

マッチポンプたかし
「……なんて捻(ひね)りのないダセェ捨て台詞……。権藤、本当にサツなんて呼んでんのか?」

権藤先輩
「廃墟とは言え、人様のものを殴り壊そうとしているのに、警察なんて呼ぶわけ無ぇだろ。お前らが本当にここに囚われているのかも判らなかったしな」

サドンデスアタッカーJun
「それにしても先輩、どうやってここが?」

権藤先輩
「ああ、簡単だよ。実はこっそりお前らのスマホにGPSアプリを仕込んであってな」

金メッシュ明美
「……は?」

権藤先輩
「その反応がこの辺りで消えたから、何かに巻き込まれてるんじゃねえかと、心配になって、電車に飛び乗ったってわけだ」

サドンデスアタッカーJun
「なんだ。超能力とか使ったのかと思った」

権藤先輩
「バーカ。お前らと違って凡人の俺がそんなの使えるわけないだろ。ただの生活の知恵だ」

金メッシュ明美
「いや、生活の知恵って言うか……。おいライフパートナー、お前らの先輩ちょっとヤバくねーか?」

こより使いの苫子
「そうなの。権藤先輩はヤバいくらいにお人よしで、頼りになるの!」

金メッシュ明美
「いや、そういうことじゃなくてだな」

マッチポンプたかし
「気持ちは判るが無駄だ。俺も何度か注意したことある」

権藤先輩
「苫子ー。前半のお人よしっていうのは、余計だぞ」

こより使いの苫子
「おっと、いっけない。聞かれてた☆」

サドンデスアタッカーJun
「そうだ。折角だし、みんなでユンスタに上げる写真撮ろー」

こより使いの苫子
 こうして、私たちは生死を賭けた恐ろしいゲームを生きて脱出することができました。
 私とジュンちゃんは権藤先輩のおごりで、帰りにざるそばを食べました。
 権藤先輩は、明美ちゃんとたかしさんも誘いましたが、ふたりは帰り道が逆だからと断りました。

 

 

 

マッチポンプたかし
「ヨースーケくーん。探したぞ。お前、逃げすぎなんだよ」

なりすましパパヨースケ
「っ! ご主人様! この度は――」

マッチポンプたかし
「謝るな。想定内だ。お前がゲームの司会だけでなく、首輪のチーム分けすらも間違えるだなんて、そんなポンコツだったなんて……想定内だからよぉ。ヨースーケくん」

なりすましパパヨースケ
「申し訳ございませんでした!」

マッチポンプたかし
「だから謝るな、っつってんだろ。いやマジで。今回はヨースケ、お前の力を測るためと、あいつを仲間に勧誘するため。そのためだけに開いたゲームなんだからよ。正直お前がポンコツだと判っただけで大きな成果だ。次からの作戦が立てやすくなる」

なりすましパパヨースケ
「あの……」

マッチポンプたかし
「あ?」

なりすましパパヨースケ
「私の名はヨースケではなく――」

マッチポンプたかし
「ヨースケだろ。ヨースケがいいじゃねぇか。なぁ、お前もそう思うだろ」

金メッシュ明美
「……別に、そいつの名前なんてどーでもいい」

マッチポンプたかし
「んな寂しいこと言うなよ。こいつは俺の作った自慢の人造人間(ホムンクルス)第一号だぜ。ちゃんと愛をもって呼んでやらなきゃ。なぁ、ヨースケくん」

なりすましパパヨースケ
「ですから、私の名前は」

マッチポンプたかし
「ヨースケだよな? ヨースケ」

なりすましパパヨースケ
「……」

マッチポンプたかし
「ヨースケー。お返事はー?」

なりすましパパヨースケ
「……はい。その通りヨースケです。ご主人様」

マッチポンプたかし
「それでいい。本当に可愛いなお前は」

なりすましパパヨースケ
「ありがたき幸せ」

マッチポンプたかし
「で、お前はどうだった。あいつ――サドンデスアタッカーJunは、そのお眼鏡にかなう相手だったか?」

金メッシュ明美
「正直まったく。ただ――」

マッチポンプたかし
「ただ?」

金メッシュ明美
「その周りの権藤先輩ってヤツと、全能神については……久しぶりにブチ上がった」

マッチポンプたかし
「じゃあ――」

金メッシュ明美
「アンタの仲間になったら、アイツらと思う存分戦えるんだよな?」

マッチポンプたかし
「神に誓ってもいい」

金メッシュ明美
「信用なんねー言葉。まー、でも、丁度退屈してたし、いーよ。その軽口にのってやる。アンタの仲間になってやるよ。マッチポンプたかし」

マッチポンプたかし
「ふふふっ、ふはははははははははははははは! 今まで俺があいつに勝てなかったのは、あいつには仲間がいたからだ! ずるいよなぁ、3対1なんてよぉ。ひどいよなぁ、あんなもんリンチだもんなぁ! だが、これでイーブン! サドンデスアタッカーJun。次に会った時が、お前の最期だ! 頼むぜ、お前ら。俺様を勝利に導け!」

なりすましパパヨースケ
「お任せを」

金メッシュ明美
「……人通り少ないけど、ここ、街中だからな」

マッチポンプたかし
「ふふふっ、ふははははははははは――!」

 

こより使いの苫子
 ざるそばは、何かボソボソしてて、あまり美味しくありませんでした。

 

 

サドンデスアタッカーJun
「さぁて、次回のサドンデスアタッカーJUNは――」

金メッシュ明美
「明美です。町の緑も少しずつ赤みがかり、秋の気配。いつもの公園の遊歩道が、まるで異世界のよう。チートスキルよこせ」
「さて次回は」
「権藤、店員ともめる」
「ジュンとキヤのおしょくじけん」
「たかし、はじめての鍋パーティー」
「の3本です」

サドンデスアタッカーJun
「次回もまた聴いてくださいね。じゃんけんぽいは飛ばして、あっち向いてほい! うふふふふふふ」

サドンデスアタッカーJun
「この番組は、にまにま製作所、レイク本舗、ファッションプラザフミクラの提供でお送りいたしました」