《あらすじ》
主よ。
哀れな御霊をお救い下さい――
〈作・フミクラ〉
●○●○●
《キャラクター協力》
【 りいち 】さん
○●○●○
《登場人物紹介》
ライト・スティング
ヴァンパイア。性別未定。
トリティア・ミント
人間。性別未定。
???
性別未定。
●○●○●
《公開期間》
2024.12.26(Tue) - 2025.01.16(Tue)
●○●○●
《 本文 》
ライト・スティング
空に大きな花が咲く。
それに応じて、人々が声を上げる。
時計の針はてっぺんを回ったというのに、明るくて騒がしい。
1月1日の午前0時。
ハッピーニューイヤー。
街はお祭り騒ぎだ。
そんな人々の中にも、絶望を抱える者はいる。
スマートフォンで会員制のソーシャルネットワーキングサービスを開き、1つの投稿を表示する。
『こんな人生、もう、いやです』
それは、同級生からのイジメに苦しむ、男子高校生の絶望だった。
そんな彼を慰(なぐさ)めようと、ネット上の知り合いや、たまたまそれを見た者達が、寄りそい、元気づけるリプライを送る。
だが……おそらくそれでは彼は救われない。
彼の人生は汚されてしまったのだ。
ゴミのような連中にゴミのようにされてしまったのだ。
ならば。
「わたくしが、救ってあげましょう」
わたくしの登場に、少年は呆(ほう)けた表情を浮かべた。
場所は路地裏(ろじうら)の突き当たり。
寒空(さむぞら)の下、少年は同級生達にパンツ一丁のサンドバッグにされていた。
痣(あざ)や傷が痛々(いたいた)しい。
「……イジメにしても、まさかこんな前時代的(クラシカル)なものだとは……」
少年を囲っていた4人のいじめっ子達が睨(にら)みをきかせて詰め寄ってくる。
どろりとした、濁(にご)った目だ。
きっと少年だけではないのだろう。
目の前にいる彼らもまた、汚れた人生なのだ。
言葉に出してこそいないが、きっと、救ってもらいたいに違いない。
知らず知らずのうちに涙が頬(ほお)を伝う。
いけない。わたくしには泣く資格はない。
もっと強くいなければ。
「主よ、憐(あわ)れな御霊(みたま)をお救い下さい」
左手の親指の爪を立て、右の掌(てのひら)に突き立て、皮膚(ひふ)を破る。
血液操作によって血を噴出させ、いつもの形に変化させる。
メイス。
上部に鋭(するど)い凹凸がついた全長80センチほどの棍棒(こんぼう)。
血が液体以外の形になるのを見るのは初めてだったのだろう。
少年達は口を開けて固まっている。
わたくしは一礼して、メイスを、一番近くにいるいじめっ子の頭に叩き付けた。
小気味良い感触が手に、骨に、響く。成功を確信する。彼は――一撃で救われた。
「全ては、主の御心(みこころ)のままに」
1人が救われたことで、状況を理解した子供達が悲鳴を上げて後ずさったり、怒鳴り散らして持っているナイフをこちらに向けたりする。
「慌(あわ)てなくても、全員救ってあげますよ」
わたくしはメイスを振り上げ――彼らを救済した。
ライト・スティング
わたくしの救済活動を一番近くで見ていた少年は、こちらと目が合うと、「ごめんなさい」と「助けてください」といった意味の言葉を、手を合わせ、震える口で何度も繰り返した。
「何を言っているのですか? わたくしは、あなたを助けに来たのですよ」
スマホの画面を彼に向ける。
そこに表示された自らの投稿を見て、少年はガチガチと歯を鳴らした。
「理解、できましたね?」
メイスを振り上げる。
「あなたの望み、わたくしが叶えてあげましょう」
少年の頭に向かって、振り下ろす。
少年は必死の形相でそれを避けると、みっともない悲鳴を上げながら立ち上がり、こちらに背を向けて駆(か)けだした。
「おかしな人ですね」
地面を蹴る。一足(ひとあし)で少年に並び、もう一足でその正面に移動し、彼を抱き留めてやる。
「あなたが、望んだんですよ?」
少年が涙と鼻水に濡れた顔で言葉にならない声を上げる。
その瞬間――背中に、衝撃が走った。
その隙(すき)をついて、少年はわたくしの腕を振り払い、脇を抜けて再度走り出した。
振り返り、少年が逃げる先。衝撃の発生元を見る。
そこには1人の人間。衝撃の正体は、ソレが握っているハンドガンだった。
そのハンドガンには見覚えがある。
吸血鬼(わたくしたち)を狩ることを生業(なりわい)としている連中の標準装備。
トリティア・ミント
「お楽しみなところ失礼致します。レア度で言えばSSRの吸血鬼――ライト・スティング様」
ライト・スティング
うさんくさい。
まず、そう思った。
「楽しんではいませんよ。……それで、わざわざ名指しで何の用ですか?」
トリティア・ミント
「ああ、申し遅れました。当方、トリティア・ミントと申しまして、ヴァンパイアハンター協会のものです。用件というのは、いわゆる職務です」
「協会は今年から、有害指定のついたヴァンパイアを、より一層、積極的にハントする方針となりまして――なので、その中でも特に大量に人間を襲っているあなたを、狩りに来ました」
ライト・スティング
ソレの横を、少年が悲鳴を上げながら抜ける。
「襲うなんてとんでもない。むしろ逆。わたくしは人々を、救ってあげているのですよ」
トリティア・ミント
「救う?」
ライト・スティング
「現在も救済の途中です。お話は後ほど伺(うかが)いますので、少し道を開けてもらってもよろしいでしょうか?」
トリティア・ミント
「ああ、なるほど」
ライト・スティング
ハンターは、その銃口の向きをこちらから外し、背後を走る少年に向けた。トリガーが引かれ、気の抜けた音が鳴り、少年の身体が前のめりに倒れる。
わたくしは慌ててハンターの脇を抜け、彼に駆け寄る。その身体を仰向(あおむ)けにして抱き上げ、その名を呼ぶ。
反応はない。
銃弾は彼の後頭部を貫(つらぬ)き、額(ひたい)まで貫通(かんつう)していた。その顔の上半分が、前も後ろも真っ赤に染まっている。
彼は、死んでしまっていた。
トリティア・ミント
「これでよし、と」
ライト・スティング
「何が……よし、なんですか」
トリティア・ミント
「いえ、その少年が生きている限りは本題に入れなかったわけですよね。ですから、代わりにやっておきました。先ほどの話の続きなのですが、現在当方以外にも何人かのハンターが有害指定の吸血鬼を追っていまして――」
ライト・スティング
代わり。
代わり?
これが、こんなのが。
こんな惨(むご)い所行(しょぎょう)が、わたくしの救済の代わり?
「あなたは……」
トリティア・ミント
「何ですか?」
ライト・スティング
「あなたは、何も判っていない!」
トリティア・ミント
「おや?」
ライト・スティング
「あなたがやったのは、ただの殺人! わたくしのは、憐れな御霊を主の元に返す、救済です! 一緒にしないでください!」
トリティア・ミント
「……」
ライト・スティング
「彼は、彼はわたくしが救ってやらねばならなかったのに……!」
涙がこぼれる。
こんなことなら、いじめっ子達よりも先に救ってやるんだった。
魂の抜け殻(がら)をゆっくり下ろし、胸の前で十字を切って手を合わせる。
脇(わき)に置いていたメイスを手に取り、ハンターと向き合う。
「彼の迷える魂を救えなかった分、あなたのその汚れた魂を救います。それがきっと、彼への手向(たむ)けとなるから」
トリティア・ミント
「さすが三害悪鬼(さんがいあっき)のうちの1体。中々のプレッシャーだ。いいですよ。救えるものなら、どうぞお救い下さい」
ライト・スティング
「土は土に」
トリティア・ミント
「灰は灰に」
ライト・スティング
「塵(ちり)は塵に」
トリティア・ミント
「あるべき場所に、還りたまえ!」
○
トリティア・ミント
バックステップしながら右手に構えた銃の引き金を引く。
相手はその銃弾を自らの血で出来た棍棒ではたき落とし、こちらに向かって歩(ほ)を進める。
それから三度引き金を引いてみるものの結果は同じ。いともたやすく棍棒ではたき落とされる。
どうやら、この方法では相手に傷をつけられないようだ。
左の爪先(つまさき)を1度地面に打ち付け、その足を勢いよく前に蹴るように突き出す。
靴に仕込んでいたナイフが、相手に向かって飛ぶ。
その軌道(きどう)を追うように走る。
銃弾と同じように、ナイフも棍棒で迎撃(げいげき)される。その迎撃されたナイフが地面に落下する寸前に左手でそれを掴(つか)む。くるりと逆手(さかて)に持ち替え、相手の左肩に向かって突き出す。
棍棒で防がれ、弾(はじ)かれる。すごい力だ。その力に逆らわず、むしろその勢いを利用し、バックステップ。相手の空いた腹を狙って、引き金を引く。命中。しかし相手は声を上げない。表情も変えない。それどころか一瞬で正面に接近される。
棍棒が両手に持ち替えられる。横薙(な)ぎの暴力が、こちらの頭を粉砕にかかる。
バク転をするような形で退避。相手は振り終わりで、僅(わず)かなスキができている。再び特攻(とっこう)。
身を低くし、左手のナイフを順手(じゅんて)に持ち替え、先ほど被弾(ひだん)した腹に向かって突き立てる。ようやく相手が苦悶(くもん)の表情を浮かべる。この好機を逃す手はない。ナイフをねじりあげながら引き抜き、心臓を狙う。刃(やいば)はブチリブチリと肉を裂き、止まった。心臓の手応(てごた)えはない。到達していない。相手がその体内の血液を操り、凝固(ぎょうこ)させ、ナイフを固定したのだ。
ライト・スティング
「捕まえた」
トリティア・ミント
大上段に構えた棍棒が頭上に迫る。
ナイフを握る手に力を入れながら、小さく跳躍(ちょうやく)。浮いた両足で相手の身体を蹴ると同時にナイフを手放し、右手の銃を両手で構え、弾が無くなるまで引き金を引く。蹴りと銃の反動で、身体が背後へ移動。先ほどまで立っていた石畳(いしだたみ)の地面が、血の棍棒で轟音(ごうおん)を立てて弾け飛んだ。
「スピードタイプだと思っていたのですが、パワータイプだったのですね。気付くのがあと少し遅ければ、ゲームオーバーになるところでした」
ライト・スティング
「わたくしも、あなたを見くびっていました。いつものような、取るに足らないハンターかと思っていましたが、なかなかどうして……」
トリティア・ミント
相手は、胸の中心に刺さったナイフを引き抜き、両手で容易(たやす)くへし折った。
ライト・スティング
「あなた風に言うと、レベルを上げねばなりませんね」
トリティア・ミント
そう言った相手の腹。先ほどナイフを突き立てた場所から、明らかに異常な量の血液が溢(あふ)れ、流れ、足下に血だまりを作り、やがてその白目が黒く反転する。
それは、一部の覚醒(かくせい)したヴァンパイアのみが扱うことの出来る、固有スキルの予備動作。
ライト・スティング
「――君よ。絶望することなかれ。主の元で安らかに眠らん――」
「神葬励起(しんそうれいき)!」
トリティア・ミント
血だまりが波を打つ。
ライト・スティング
「『慈愛聖域(アヴェ・マリア)』!」
トリティア・ミント
相手が唱(とな)えた瞬間、血だまりがいくつもの蝶(ちょう)のような形となり、一斉に舞い上がった。
自らの血で出来た無数の蝶を従(したが)えながら、有害指定の吸血鬼は、こちらに聖者(せいじゃ)のような微笑みを向けた。
ライト・スティング
「あなたのゴミのような生涯(しょうがい)。最後にわたくしが救ってあげましょう」
○
ライト・スティング
神葬励起を目にした途端(とたん)、ハンターは背を向け走りだした。
向かう先にあるのは煉瓦(れんが)造(づく)りのビル。
走る勢いそのままに。ビルの壁を5メートルほど駆け上がり、その窓枠に立つと、一切の躊躇(ちゅうちょ)なく、持っていたハンドガンを叩き付けて、窓を割った。
トリティア・ミント
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ」
ライト・スティング
笑顔でこちらにそう呼びかけ、ビルに飛び込むハンター。
「『慈愛聖域(アヴェ・マリア)』がどのようなものか、測(はか)っているのでしょうか?」
それとも、自分が戦い易(やす)い地形に持ち込んだのか……。
何にしても、相手を追ってビルに入るのは得策(とくさく)ではない。
「(ため息)……いけませんね。損得(そんとく)を考える者に救済など行えるはずがない……良いでしょう。鬼ごっこに乗ってあげましょう」
「ただし、鬼がわたくしだけとは限りませんが」
○
トリティア・ミント
室内を眺(なが)める。ここは元々、地方新聞を発行していた新聞社が入っていたビルだ。
その性質上、年末年始のこの時期は、朝も夜もなく灯りがともっていたが、1年前に新聞社が倒産したため、中身も全て取り払われ、現在は無人の箱と化している。
「さて、どこから来るか」
銃に弾丸を装填(そうてん)しながら呟く。
相手もバカじゃない。
おそらく当方が割り入った窓からは、入ってはこないだろう。
「――と、思ったんですけどね」
ビルの外。割れた窓の下から手が伸び、窓枠にぶら下がるようにつかまった。
「あー、あー、そこまだガラス完全に取れてないのに……ほら、血が出ちゃって」
相手がその手に力を込め、身体を引き上げる。それに合わせて、引き金を引いた。
放った銃弾はタイミングピッタリ。上がってきた相手の額にクリーンヒット。
衝撃で首が後ろに弾かれるが、相手は窓にかけた手を離さず、ビルの中へ飛び込んだ。
「……おや、思っていたのとは違うのが来ちゃいましたね」
入ってきたのは、高校生くらいの少年。
それに続けとばかりに、同年代くらいの少年が3人、室内に入ってくる。
4人は、先ほどライト・スティングに殺害された者達だった。
「もしや……眷属(けんぞく)ですか?」
吸血鬼の繁殖方法は、大きく分けて2つ。
同族や人間との受精(じゅせい)によって子をなす有性生殖(ゆうせいせいしょく)と、吸血鬼ではない者に自らの血液を摂取(せっしゅ)させることで、配下の吸血鬼へと変貌(へんぼう)させる、眷属化の2つだ。
「だとしたら、おかしいですね」
眷属化は基本的に生者にしか行わない。眷属にされた吸血鬼は、親の吸血鬼に逆らうことが出来ない、というルールがあるが、死者から眷属になった者にはそのルールが適応されないからだ。
むしろ、逆恨みして、親の吸血鬼を殺しにかかる確率の方が高いとすら聞く。
なのに――
「何故、一直線に当方を狙ってきているのでしょうか……」
問うてみるが答えはなく、4人は一斉に飛びかかってきた。
「(ため息)吸血鬼というより、ロボットやゾンビといった感じでしょうかね」
一般的な吸血鬼は、心臓が破壊されれば灰に還る。手早く冷静に照準を心臓に合わせ、引き金を絞(しぼ)る。
4体の元人間は、前のめりに倒れた。
「なんて歯ごたえのない……それでも吸血鬼ですか?」
呟いて、ふと疑問が生まれる。
この4体は果たして本当に眷属――吸血鬼になったのか。
だとしたら何故、灰に還らない?
再び死体に戻った彼らを遠目から観察する。そして、気付く。彼らの首には、ライト・スティングの血で出来た蝶(ちょう)がぴたりと貼り付いていた。
「……これか?」
その時、下の階から騒がしい足音が響いた。
現在このビルは無人のはず。
何があったのか。4人を捨て置き、階段の方に向かう。
階段には、埋め尽くすほどの大量の人間がいた。
さきほどまで、新年を告げる花火を見てはしゃいでいたであろう人々だ。
死者ではないし、吸血鬼でもない、ただの一般人。
彼らは当方を目にするなり、無言で飛びかかってきた。
その顔や首や手の甲(こう)には、ライト・スティングの血の蝶。
「……そういうスキルか」
彼らに背を向け、階段を駆け上がる。
神葬励起。
覚醒したヴァンパイアが、一定量の血液を体外に露出することで発動する固有スキル。
ライト・スティングは吸血鬼の中でも、とりわけハンターとの戦闘回数が多い吸血鬼だ。
それにも関わらず、協会はそのスキルを把握していない。
理由は単純だ。
神葬励起を行うまでもなく、決着がついたから。
もしくは、
「神葬励起を目にした者の命を尽(ことごと)く奪ってきたから……か」
ライト・スティングの神葬励起。それはおそらく、あの蝶が貼り付いた者――生者でも死者でも関係なく、自らの支配下におき、操ることができるというものだろう。
あの蝶を剥(は)がせば、そのコントロールは外れるのだろうか。試しに振り返って、先頭集団(トップ)にいる男の首についた蝶を撃ってみる。
男の首と血の蝶に穴は空くが、蝶は剥がれず、男は血を噴き出しながら尚(なお)もこちらを追ってくる。
「一体化しているのか……」
全員蹴散(けち)らすという手もあるが……何せこの量だ。詳しい数は判らないが、100人では済まないだろう。それだけの一般人を殺し尽くしたとあれば、上層部からの信頼はガタ落ち。今後の支障になる。
「この場を収める1番簡単な方法は、適当な窓から外に出ることなんですが……今回の目的はライト・スティングの討伐ですからね……」
Nキャラに追われ、階段を上る。上り続ける。フロア散策(さんさく)などしない。
あの吸血鬼は、この程度の力しかないキャラ達で当方を倒せると本気で思ってはいないだろう。アレはおそらく、自分の力で相手をねじ伏せなければ安心できない類(たぐい)の者。
ならば、このNキャラ達は、誘導係。
自分の元へと、獲物を導く案内人だ。
「遮蔽物(しゃへいぶつ)のない、視界が広い空間での戦いというのは、あまり得意ではないのですが……仕方ありませんね」
階段の終点。屋上の扉を開ける。
むせ返すほどの、濁(にご)った血の臭(にお)いが鼻をつく先には、
赤や青や黄色、色とりどりの花火が咲く夜空をバックに、
無数の赤い蝶と、有害指定の吸血鬼が佇(たたず)んでいた。
○
ライト・スティング
「鬼ごっこ、お疲れ様です」
トリティア・ミント
「2人だけで遊ぶ予定だったのに、そちらの友人を連れてこないで下さいよ」
ライト・スティング
「皆様気のいい方ばかりなので、仲良くなってもらいたいな、と思いまして。紹介がてらに」
トリティア・ミント
「恥ずかしい話ですが、当方は人見知りでして、知らない人と一緒の空間にいると、緊張して無口になってしまうんです。あと、友人は1人いればいいと思っているので、その気遣いは、余計なお世話です」
ライト・スティング
「……」
トリティア・ミント
「どうしたんですか?」
ライト・スティング
「ご友人いらっしゃるのですね。てっきり『ぼっち』かと」
トリティア・ミント
「……友人くらいいます。(小声で)1人だけ」
ライト・スティング
「これは失礼」
屋上に辿(たど)り着いたハンターの息は切れていない。
到着速度から考えるに、どうやらわたくしの信者達と戦わずに来たのだろう。
ハンターから10秒ほど遅れて、信者達が屋上に雪崩(なだ)れ込み、わたくしとハンターの周りを囲うように立つ。
トリティア・ミント
「もういいでしょう。解散させてくださいよ。ああいうパリピな方達、苦手なんですよ」
ライト・スティング
「付き合うと意外に面白いものですよ」
メイスを地面に打ち付ける。信者達に貼り付いた蝶の右の羽が剥がれ、空に舞い、新しい蝶に変わる。
トリティア・ミント
「(ため息)空には血の蝶。周囲には操られた一般人。そして目の前にはSSRの吸血鬼。全員が襲いかかってきたら、ひとたまりもありませんね」
ライト・スティング
「勘違いしないでください。蝶も信者もあなたを逃がさないための檻(おり)です」
トリティア・ミント
「オーディエンスということですか」
ライト・スティング
「ええ。そういうことです。ああ、地上に降りたら逃げられるなどとは、考えないでくださいね。ここから半径2キロ以内の人間は、全てわたくしの信者になっていますから」
トリティア・ミント
「半径2キロ以内の人間って……とんでもないですね。まぁでも、それらを相手取らないでいいという点には、安心しました」
「安心して、特別チケットを切らせていただきます――限定課金(オーバーチャージ)」
ライト・スティング
瞬間、ハンターの周りを、4つの光の帯(おび)が回る。
トリティア・ミント
「難易度低下、経験値上昇、身体能力最大強化」
ライト・スティング
その帯は1つずつ中心に立つハンターの身体へ収束(しゅうそく)し、
トリティア・ミント
「選択式・対吸血鬼用兵器ガチャ起動」
ライト・スティング
その度に、その身がキラキラと輝く。
トリティア・ミント
「SSR選出――取得!」
ライト・スティング
最後の帯が収束したとき、ハンターの両腕には、金のガントレットが装着されていた。
トリティア・ミント
「『賢者だけに見える服(ストリーキング)』!」
ライト・スティング
指の先から肘までを覆(おお)った重量感のある籠手(こて)を装着したハンターはしかし、先ほどまでのスピードとは比にならない程の速さでこちらに接近すると、跳び上がり、ガントレットに包まれた右拳を、縦回転でわたくしの頭に向けて振り上げ、振り落とす。
ライト・スティング
げんこつと言えば微笑ましいが、そんなレベルの威力では済まないだろう。
後方に跳び、その拳を避ける。
トリティア・ミント
「フッシャアアアアア!」
ライト・スティング
「っ――!」
完璧に避けたと思った。いや、実際に避けた。拳はわたくしの前方10センチほどで風切り音を発しながら空振りした。
なのに、胸から腹にかけて、痛みが走る。
見ると、その部分の服や肉が切り裂かれ、血が滲(にじ)んでいる。
切り裂き傷は、4本。
大型の獣に引っかかれたような痕(あと)。
メイスを相手の右の横っ腹に向け、振り抜く。ハンターはそれをガントレットで受け止めた。しかし、その程度の防具で受け止められるほど、わたくしの力は弱くない。ハンターはその場に踏みとどまれず、信者達を巻き込みながら横合いに吹き飛んだ。
傷を触(さわ)る。確かに相手の拳は避けたはず。いや、そもそも拳でこんな傷はつかない。
「……不可視(ふかし)の魔術でも施(ほどこ)しましたか」
トリティア・ミント
「さすがSSRキャラ」
ライト・スティング
ハンターは何事もなかったように立ち上がった。
トリティア・ミント
「ストリーキングは、今は壊滅(かいめつ)した呪詛(じゅそ)に特化した極東(きょくとう)の魔術結社と協会が共同開発した、刃(やいば)に不可視の魔術が施された――鉤爪(かぎづめ)です」
ライト・スティング
「鉤爪とは……また奇異(きい)なものを」
ハンターが再びこちらに接近、肉薄(にくはく)。見えない鉤爪を振り回す。
目視(もくし)できないのは厄介(やっかい)ではあるが、さきほどの一撃で、鉤爪の大体の長さは計算できる。
避けられるものは避け、避けられないものはメイスで捌(さば)き、隙(すき)をついてメイスを振るう。避けられる。
どちらの攻撃も相手の身体に当たらない時間が続く。
しかし、数分ほどしたところで、その時は来た。
トリティア・ミント
「うっ……!」
ライト・スティング
相手の動きが悪くなり、わたくしのメイスが直撃。その身体が勢いよく夜空を飛び、信者達を巻き込みながら、落下防止用の柵(さく)に激突した。
○
ライト・スティング
「咄嗟(とっさ)にガントレットでの防御。なかなか救いにくい人だ」
トリティア・ミント
操られた一般人がクッションになってくれたおかげで、柵にぶつかった痛みはあまりない。が、棍棒の衝撃を上手く殺せず、左腕を痛めた。
身体を起こし、相手を見る。
相手の周り。血で出来た赤い蝶に交じって、金色の蝶が舞っている。
その蝶は、数秒前までは1羽もいなかった。
瞬(まばた)きの一瞬で、夜空を金色に染め上げていた。
それを目にした瞬間、頭に鈍(にぶ)い痛みが現れ、全身が沼(ぬま)にはまったように重くなった。
そして、その痛みと重みは、時が経つごとに、どんどん増している。
「なんですか、この蝶は……」
ライト・スティング
「おや、金の蝶が見えますか? ようやく、あなたにも効いてきましたね」
トリティア・ミント
「……神葬励起」
ライト・スティング
「ご名答(めいとう)」
トリティア・ミント
「おかしいですね。蝶が身体につかないよう、立ち回っていたはずなんですが」
ライト・スティング
「ええ。確かにあなたは、蝶を寄せ付けなかった。しかし、蝶は貼り付かなくても効果を発揮します。相手の周りを飛んでいるだけでね」
トリティア・ミント
「どういうことですか」
ライト・スティング
「判りませんか? ――鱗粉(りんぷん)ですよ」
トリティア・ミント
「っ!」
ライト・スティング
「蝶達は、目には見えないほど小さな鱗粉を振りまきながら飛んでいます。その鱗粉が一定量体内に入ると、蝶と同じ効果を発揮します。金の蝶が見え、脳内のデトックスが始まり、身体が蛹(さなぎ)化、やがて意識が浄化され、わたくしの信者として生まれ変わるのです」
トリティア・ミント
「反吐(ヘド)が出そうですね」
ライト・スティング
「安心してください。わたくしもあなたを信者にする気はありません。あなたはきちんと、責任を持って、救ってあげますよ」
トリティア・ミント
「……あなたに、救えますかね?」
ライト・スティング
「ええ。実績がありま――っ!」
トリティア・ミント
そこで相手の言葉が止まった。
胸を押さえて、地面に膝(ひざ)をつき、血を吐き出した。
「おや、ようやく、あなたにも効いてきましたね」
ライト・スティング
「何を……したんですか?」
トリティア・ミント
「いひひひひ、神葬励起は、その吸血鬼が発現時に最も強く抱いていた『恐怖』によって、効果が決まると言われています」
ライト・スティング
「それが、どうしたと言うんですか」
トリティア・ミント
「まぁ聞いてください。例えば、当方の親友に神葬励起を扱える吸血鬼がいるのですが」
「その方は、荒事(あらごと)が何よりもキライで、他人に暴力を振るう輩(やから)を誰よりも嫌悪している、有害指定が1度もついたことがない、善良な吸血鬼です」
「だから、と言うべきでしょうか。その方の神葬励起は、身体能力の向上という暴力に特化したものとなっています」
「その例で考えたとき、他人を操る神葬励起を扱うあなたの『恐怖』は操られること。もしくは――身体の自由を奪われること」
ライト・スティング
「……」
トリティア・ミント
「この鉤爪には、不可視の魔術の他に、敵対者の自由を奪う呪(のろ)いがかけられています」
ライト・スティング
「自由を奪う、呪い……」
トリティア・ミント
「屈辱(くつじょく)でしょう? 呪いの発動条件は3つ」
「1つ、不可視の鉤爪で相手を斬りつけること」
「2つ、斬撃(ざんげき)の瞬間を、1人以上の未成年を含む、20人以上の方に肉眼(にくがん)で見られていること」
「3つ、その上で、この鉤爪にかかった不可視の魔術の情報を相手に伝えること」
「この3つの条件が達成できたとき、呪いが発動するのですが。その中でも、2つ目の20人以上に目視。というのが割と難易度高めでして……ですが、今回はあなたのおかげで、その条件も楽々クリアできました」
ライト・スティング
「信者を、利用されてしまったわけですか」
トリティア・ミント
「呪いは通常の吸血鬼相手には2時間ほど効果を発揮します。SSRのあなたならば、もっと短い時間で済むかもしれませんが、無理に動かないことをオススメします。動けば動くほど、呪いはあなたの身体を内側から蝕(むしば)み、破壊してしまうので」
ライト・スティング
「……解説ありがとうございます。おかげで状況は把握(はあく)しました」
トリティア・ミント
「どういたしまして」
ライト・スティング
「つまり、わたくしもあなたも自由に身体を動かすことが出来ない」
トリティア・ミント
「ええ」
ライト・スティング
「ですが、そこには大きな差がある。わたくしは、最大でも2時間我慢すれば、呪いは解けるが、あなたは時間が経てばわたくしの信者になってしまう」
トリティア・ミント
「……ええ」
相手の言う通りだ。身体はロクに動かず、このままだと当方は、相手の手駒(てごま)へと変わるだろう。普通ならば、絶望的な状況だ。
そう、普通ならば。
ライト・スティング
「それは、腹立(はらだ)たしいですね」
トリティア・ミント
相手は、ライト・スティングは、顔を引きつらせながら立ち上がった。
普通の吸血鬼ならば、指先を動かすだけでも気絶するほどの痛みを与える呪いをその身に抱えながら、こちらに向かって歩みを進める。
ゆっくりと。
1歩ずつ。
○
ライト・スティング
物心ついたとき。両親はすでにこの世にいなかった。
教団の経理をやっていた父。彼に魔が差したゆえの結果だったらしい。
わたくしは、伴侶(はんりょ)もろとも処分されても、なお償(つぐな)えない彼の罪を贖(あがな)うために、教団の天使となった。
9歳から28歳になるまで、天使としての使命を果たした。
教団の弊害(へいがい)となる者を、殺して、殺して、殺し尽くした。
27歳の秋。丁度666人目の標的は、人間ではなかった。
吸血鬼と呼ばれる人外。
人間よりも回復力や生命力が高かったため、念入りに解体した。
後で知った話だが、このときにわたくしは血液感染し、自らも吸血鬼になったらしい。
吸血鬼になって、最も変化が生じたのは、考え方。
今までの生き方。教団の天使としての生き方。それに疑問を持たなかった自分に疑問を持った。
そしてわたくしは――教団の幹部や信者達を、鏖殺(おうさつ)した。
わたくしは、外道だ。
主に救われる価値もない、腐ったゴミクズだ。
命令とはいえ、物心ついた時分(じぶん)より、人を手に掛けてきたわたくしが、そこから人並みの暮らしなどできるはずがない。していいはずがない。
だが。
だからこそ、わたくしだけに出来ることがある。
それが、救済。
礼拝(れいはい)にて、司教(しきょう)が何度も口にしていた言葉。「我らが主は、不憫(ふびん)な者から順に救ってくださる」
わたくしのようなゴミクズに殺された者は、どんな者であろうと、きっと誰よりも不憫な存在だろうから……その不憫さには、我らが主も、慈悲(じひ)のお心をかけてくださるだろうから。幸せな来世へと繋がる輪廻(りんね)へ、迎え入れて下さるだろうから。
だから、今までわたくしは、死にたいと嘆いた者を。
人生に絶望した者達を。
何人、何百人、何千人もの御霊を、主の元へ送り、救ってきた。
目の前の相手は、わたくしと同類。腐ったゴミクズの外道だ。
絶対に救われない、救われてはいけない御霊。
だが、約束したのだ。
わたくしが救ってやると。
約束したからには守らねばならない。
例えゴミクズだとしても、救済を行う者が、約束を破るわけにはいかない。
ただでさえ、今日は少年との約束を破ってしまったのだから。
でも……よくよく考えたら、彼はわたくしの同類に殺されたのだから、救われたことになるのだろうか。彼の御霊は主の元に辿り着けたのだろうか。
「辿り着けていると、いいな……」
呟き、立ち上がる。
呪いによって身体が悲鳴を上げる。
歩く度に、全身に痛みが走り、内臓(なか)が破壊され、血が喉(のど)に上がってくる。
だが、それが――どうした。
そんなものは、わたくしの救済を妨(さまた)げる理由にはならない。
「信者には、しません……約束、通り、必ず、わたくしがあなたを――」
相手まであと5歩――。
4歩――。
3歩――。
???
「――屑鉄の沼(スクラップ)」
ライト・スティング
その声は、わたくしの後方。遙(はる)か遠くから。
聞き覚えのある声。
その声に呼応(こおう)して、足下に血だまりが生まれ、そこから錆(さ)び付いた無数の刃がわたくしの足を貫き、その場に縫(ぬ)いつけた。
「これ、は……」
わたくしは、この攻撃を知っている。
これは――
目の前の相手の右手側にも小さな血だまりが湧き、そこから赤い槍(やり)が生える。
相手は脂汗(あぶらあせ)を浮かべた顔を上げ、口の端(はし)をニヤリと歪(ゆが)め、
トリティア・ミント
「持つべき者は、高レベルフレンドサポートですね!」
ライト・スティング
その槍を右手に掴(つか)み、わたくしの心臓目がけて――
トリティア・ミント
「フッシャアアアアアアアaaaaaa――!」
ライト・スティング
「んっ……!」
自らの命が破壊される音が身体中に響く。
空を舞っていた蝶が、その形を保(たも)てず、ぼとりぼとりと墜(お)ちていく。
信者達が、ばたばたと倒れていく。
手から滑(すべ)り落ちたメイスが、地面についた瞬間、灰となる。
「……つくづく、救えない、ヒトたちだ」
トリティア・ミント
「何か、言い残すことはありますか?」
ライト・スティング
「あなたは……間違っています」
トリティア・ミント
「何がですか?」
ライト・スティング
「神葬励起の、ことです。わたくしの、『恐怖』は、操作、されることでも……っ、自由を、奪われる、ことでもありません」
ライト・スティング
そんなのは、人間の頃で慣れっこだったから。
トリティア・ミント
「では――」
ライト・スティング
「単純、に、わたくしは」
「虫が――嫌いなんです」
○
トリティア・ミント
ライト・スティングが灰となって消えた後。
複数のコウモリが飛んできて、合体。ヒトの形に変わった。
???
「お疲れ様でした」
トリティア・ミント
「ええ、今回ばかりは本当に疲れました。そして先ほどはありがとうございました。おかげで何とか討伐に成功致しました」
???
「私としても、あなたがこんなところで終わるのは本意ではありませんから」
トリティア・ミント
「いひひひ、あ、少しすみません」
スマートフォンを開く。同僚(どうりょう)からの報告が2件。
「順調にヴァンパイアハントが進んでいるようです。Rキャラの吸血鬼を2体討伐したという報告が入りました。当方と同じようにSSRキャラをハントしに行った同僚からの報告は……まだないですね。1番乗りだ」
???
「そうですか」
トリティア・ミント
「そう言えば、聞きたいことがあるのですが、この――操られていた方達はどうなるのでしょうか」
???
「その能力を隅々(すみずみ)まで知っているわけではありませんが――」
「【司祭(しさい)】の神葬励起『慈愛聖域(アヴェ・マリア)』は、発動している間のみ、蝶が寄生した他人を操ることのできる能力だと記憶しています。【司祭】が灰に還った今、その効果は消え……じき、彼らも目を覚ますかと」
トリティア・ミント
「良かった。このままこの人数が目覚めなかったら、上層部から何言われるか……」
???
「ただし、あちらの――首を負傷された方はどうなるか判りませんが」
トリティア・ミント
「……さっき当方が撃ってしまった方ですね。とりあえず止血くらいはしておきます。それよりも気になっているのですが……【司祭】というのは?」
???
「ああ。我々の頭目(とうもく)が名付けた、ライトの二つ名です。あまり浸透(しんとう)していませんが」
トリティア・ミント
「二つ名……当方はそういうの大好物ですが……珍しいですね。吸血鬼がそんな、人間みたいなこと」
???
「頭目は、元人間ですので」
トリティア・ミント
「なるほど。以前から、我が強く、同族への仲間意識が低いと言われている吸血鬼が組織など作るだろうか? と、疑問に思っていたのですが――ようやく合点(がてん)がいきました。ちなみに、あなたは、何と?」
???
「私は――【執事(しつじ)】と、呼ばれています」
トリティア・ミント
「いひひひひ、良いセンスですね。頭目さんとは、友達になれそうな気がします……あ!」
???
「なにか?」
トリティア・ミント
「いや、申し訳ございません。カートンさんから、新年のメッセージが届いてまして」
???
「友達ごっこは順調のようですね」
トリティア・ミント
「ん?」
???
「どうかされましたか?」
トリティア・ミント
「ごっこというか……カートンさんは、正真正銘、大親友ですよ? 生まれて初めて出来た、誰よりも信頼できる大事な友人です」
???
「…………失礼致しました。そうですか……確認なのですが、計画に支障はありませんよね?」
トリティア・ミント
「支障?」
???
「親友が悲しむから、という情で、計画を無しにするということは」
トリティア・ミント
「ありえません。確かに、悲しむかもしれませんが――長い目で見れば、カートンさんの望みである『ヴァンパイアと人間の対立の終焉(しゅうえん)』も訪れますし。親友の望みのためにも、この計画は、確実に実行し、成功させます」
???
「……」
トリティア・ミント
「どうしました?」
???
「いえ、何でもありません。では、私はこれで」
トリティア・ミント
「はい。次に会うときは、組織の皆様と共に」
○
トリティア・ミント
「――もしもし、シャオンさんですか」
「いえ、せっかくですし、文字ではなく言葉で伝えようと思いまして」
「――明けまして、おめでとうございます。今年も、よろしくお願いします」
通話を切って、顔を上げる。
新しい年が始まったばかりの空に、
一際(ひときわ)大きな花が咲き。
視界の端で、
金の蝶が、羽ばたいた。